大型作品の納品&設置で埼玉へ!その①

皆様お久しぶりです! なかなか更新出来ずスミマセン! でも元気です!

 

今回は遠方よりご注文いただいておりましたお客様のご自宅へ、ようやく大型の作品が完成しましたのでフェリーに乗って久しぶりの土地、埼玉県まで!!

 

随分と予定よりも制作に時間がかかり、大変お待たせさせてしまいましたが細部までどうしてもこだわり抜いた作品に完成させたかった為、ご了承くださったご依頼主様には本当に感謝しております!

 

部分的にではありますが制作中の内容からご紹介しますね!

鍛金作業、熱を加えて→叩くをひたすら繰り返し 何万回とハンマーを振るいます!
鍛金作業、熱を加えて→叩くをひたすら繰り返し 何万回とハンマーを振るいます!

何を制作していたのかと言いますと、時計です。

大型壁掛けの電波振り子時計です。

 

ただし、そう簡単な制作内容ではなかったのですよ。

あまりにも精密な部分が多く、取り付け方法、電池交換、振り子の基準、etc…と部分的に試作&実験&検証を繰り返しましたので、大変時間がかかりました。

 

銅板も通常規格サイズでは足らず、設計もかなり考えました。

やはり、サイズが変わると単純に倍の工程とは行きませんから、技法、手順、強度などすべての要素が変わってきますからね~  叩くのも一苦労でした。 

 

 

 

 

それでも、こういう機会を仕事として頂けるということは大変光栄です。 

大きなものを制作するというのは、わくわくしますし、やっぱり気持ちの上でも違います。

作品に対する愛情や責任はいつでも等しく考えていますが、僕にとって大きなものを作れる事は、日々の中で意外と常に出来る事ではなかったりします。

 

焼き鈍しにも厳密には最適の温度があります。金属表面の色で判断します。
焼き鈍しにも厳密には最適の温度があります。金属表面の色で判断します。

大体、どの工程でも火を入れて焼きなましを行います。

これによって地金が柔かくなり、形成しやすくなります。

でもその後ハンマーで叩けば叩くほどに硬い表面に変化していきます。まさに鍛える金属→鍛金(たんきん)という訳です。

この作用は全ての金属に当てはまる訳ではなく、銅や鉄などが代表的ですね。 

 

ちなみにこの状態から立体的な枝になっていくんですよ~

そこが金工の面白いところですね!

ほら、立体感が出てきました!
ほら、立体感が出てきました!

なんとなく立体感も出てきましたね。

写真で見ると早く感じますが、とても時間かかっています。

 

熱のかかった場所によって表面の色具合も違います。

酸化した銅の被膜の色になりますが、着色料では出せない味わいがあって、個人的に大好きです。 でも剥がれや耐久性も考えないといけないので、そこに先人の知恵や工夫を加えたり、オリジナルの技法なども使います。意外と植物や食べ物なども使用したりするんですよ~  

この分野はまだまだ未開拓の発見がありますね。

 

溶接中は面をかぶっています。
溶接中は面をかぶっています。

溶接作業も多いです。 でも溶接の熱は強力で、この部分が先ほどの「焼きなまし」と同じように金属が軟化してしまいます。 そのままだと強度が落ちるので、再度硬くしなければいけませんが、でも形状的に叩いたりはできないパーツも多いのです。

そういう時には砂を吹き付けたり、ヤスリで地道に軽く削っていきます。

このように単純にハンマーで叩く以外にも金属を硬くする方法は工夫次第でいろいろあるのです。

 

 

 

 

機械であれば簡単な作業「まっすぐに折り叩く」

これは手作業になると大変な作業になります。 

僕の工房にはプレス機は無い為、いつも手作業と工夫で行いますが、はっきり言ってコレ、一番難しいです。

焼き鈍しもやってはいけない場合などは特に難しい! 

金属には力の作用で反る習性もある為、まっすぐに戻すのは簡単ではありません。

 

しばしば他の注文制作でピシッとしたデザインラインのお仕事等がありますが、いつもこの時は大変ですね。

葉のデザイン部分は七宝も組み合わせて、彩が楽しくなるように制作しました。 今回作った100枚以上の葉は全て色、葉脈や形が違います。

 

七宝も奥が深い世界で、いつも何か新しい表現を考えてしまいます。ニコクラフトの制作理念ではセオリーに囚われないで、いつも新しいことを挑戦する姿勢を大事にしています。

 

七宝は日本の伝統工芸の一つになっているのですが、もちろんその積み上げられた歴史工芸も知り、吸収しながら新たな発見を探すことは容易ではありません。 どんな世界もそうですが先人の知恵は簡単に追い越せるものなどありません、それでもアンテナはいつも何かを受信できるようにスタンバイして制作をすることが何より楽しいのですよ!

 

七宝の制作では電気窯で均一に温度を上げる以外に、直に手に持ってバーナーを当てて、温度変化を急激に上下させたりすることで、面白い下地の変化も生まれたりします。

これはコントロールというよりは、偶然生まれることが多いので、再現は難しいですがこういった作業は面白いですね~

北海道の自然を愛するご家族の想いを、動物達にも込めて制作しました。 エゾシマリス、シマフクロウ、ナキウサギなどそれぞれ立体で仕上ます。

 

生物は表面的な形ではなく、骨格や筋肉など見えない部分をどれだけイメージ出来るかで変わってしまいます。

デッサンに通じたところもありますね。

 

とはいっても実際のサイズは2,3センチ位の小さなリス君。

簡単には出来ない工程なので、これまた大苦戦。

う~ん、うまく出来るかな?

これはシマフクロウ。

アイヌの神様。

実際に本物を見ることはなかなか出来ない幻の鳥。

家を守る神様でもあるので、新しい空間でいつまでもそうあって欲しいなと思い、取り入れました。

 

釉薬乗せてから、溶ける寸前の温度で繰り返し、ザラッとした質感へ!
釉薬乗せてから、溶ける寸前の温度で繰り返し、ザラッとした質感へ!

振り子部分にはナキウサギ。

ご依頼主様は北海道で一番好きな動物と伺っておりましたので

メインの振り子に抜擢です。

当初、金属のみで試作しましたが、やっぱり色味があるほうがいいなと思い、こちらも立体的な七宝に。

 

毛並みも本物イメージに近くするために、七宝の釉薬も何色も配合したオリジナルカラーです。

時計部分はハンマー鍛金作業。地味に見えますが、裏側に鉄で出来た「当てがね」を当てて叩くのです。

これはまだ最初の状態なので、ここからが長いです!

これは結構先の状態なので少し割愛しますが、なんとなくイメージが見えてきましたでしょうか?

たまにパーツをあてがってバランスを確認します。

 

大げさなことではなく、数ミリの意識で見え方は本当に変わってくるので、葉の一枚でも真剣に調整しながら離れた場所から眺めてみたり、多方向、側面の見え方など、実際に飾るイメージをここで汲み取り考えます。

 

僕は作るときに、ご依頼を頂いたお客様が実際にどんなライフスタイルの中で作品を見て飾ってもらえるのかと、とても考えますし気になります。

例えば、廊下を歩く時、ふと視線の先に見える感じとか、あるいはソファーに座って一家団欒の中、横目に移るイメージなど。 物を作るならば、物がライフスタイル空間の一員になって欲しいと思っています。そういった作品が出来るなら、きっと愛されてもらえるのかなと。

娘を嫁に出す気持ちってこういう感じかも知れないな~(娘はいないけど)

他のデザイン部分が複雑な為、逆に文字盤はシンプルにしました。

時計である以上、機能的にも見やすいように。

質感出てきたかな?
質感出てきたかな?

木の質感に近づけたく、苦労しましたが部分的に磨きをかけて凹凸具合もメリハリが生まれて、表面のいい顔具合になってきました。  

いろいろな形状のハンマーを使い分けてそれぞれテクスチャーの見え方を変えているので、個人的にも好きな表情です。

だんだんイメージが浮き出てきました。

僕の仕事ではラフデザインはもちろん重要ですが、実際に制作している現場でのアレンジや新たな発見が作品の面白さを深めてくれていると思います。

僕自身、その時まで考えていなかった事や驚きもあるのですが、これは今回の様な大型作品を手掛けていると、より多く出会える事のような気がしましたね!

 

そのかわり、そういう事に出会ってしまうと作家魂が熱くなってしまうので、やり直したり工法を変えたりと完成までは遠回りになってしまうのがつらい所です。

プロとしての納期も本来大事なことですが、大幅に遅れてしましました。 僕はその部分については反省するご依頼が多いですから、実際の制作経験で場数を踏むしかないのです。

 

でもそれを最善の作品にする為と理解してくださるお客様には本当に感謝しかありません。 こういう気持ちで僕の作品達を待っていて下さるお客様に出逢いたいと思ってこの仕事を選んでいますから本当に本当に嬉しいんですよ!

そういう時、かっこつけている訳でなく、1人で創っている感じがしないんです。

そこにお客さんたちの目が届いているような、現場で話し合いしているような雰囲気になります。

かなり独り言も多いですが(笑)

 

僕はいつもすばらしいお客さん達に出逢えてとても恵まれています。毎日そう思います。

 

 

 

 

 

今回はここまでにします。また続きは数日後にアップします~